開放より2段絞ったところ

徒然なるままに…主にカメラの事を書いていくことになるかと。

美しいボケを作ろう ~知識編~

こんにちは、壁紙です。

今回は前回の記事に引き続きまして、「ボケ」に関する私の知識を備忘録的に残しておきます。

 

 

質のいいボケ

今まで簡単に「ボケボケ」って認知症のじじいみたいに何度も繰り返してきましたが、ボケにも種類があったりします。まあ基本的にどれも「焦点があっていない」という点では同じボケですが、見た目と与える印象が違ったり。

前・後ボケ

一番普通のボケ。背景とか前景がボケるやつです。お高いレンズだと結構画面全体がふわっと均等にボケますが、安いレンズとか古いのだと、「ぐるぐるボケ」とかになります。

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いい感じにボケた例。お高いレンズは使ってませんが。面でボケる写真は「とろける」なんて言われたりもします。

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YN50の開放で撮影。ボケの形が画面中央を中心に少し円になっているのわかりますか…?これは抑え目な方ですが、オールドレンズなどはこれがもっと顕著なものも。 点・線光源が多いとできやすいのですが、それは原因が収差(画面のゆがみ)だからです。お高いレンズはほとんど収差が出ない…。

 ぶっちゃけこれは好み。ふわっとボケるのが好きな人もいるし、面白いボケ方が欲しい人もいるわけで。どちらがいいわるいではありません。が、ぐるぐるボケは背景がうるさくなりがちなので、私は使うタイミングを選んでいます。

玉ボケ

イルミネーションとかをぼかすといわゆる玉ボケってのがでます。形は名前のまま、玉です。いろいろな現象の中でもこの玉ボケが一番レンズの性能をじかに受けます。

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私はレンズを評価するとき玉ボケを見ています。左がYN50(現代の格安レンズ)で、右がSuper Takumar 55mm(50年前のレンズ)。両者ともF1.8での撮影。

中心付近ではタクマーのほうはトゲのようなものが出ています。これは絞りの形が悪く、完全に丸にならないからです。一方端のほうに行くと、どちらも玉の形が真円ではありません。YN50はレモン型、タクマーは楕円です。一般的に真円に近い方が収差が少なく、いいレンズとみられます。まあ端っこだけレモンできてたら嫌だもんね…。これは口径食というのですが、絞りを2~3段絞ると軽減されるケースが多いです。

他にも…

ボケの「良さ」を見極めるためにはほかにもいろいろなものがあります。例えば色収差ですとか、球面収差ですとか。基本的にこの二つが好まれるケースは全くと言っていいほどないです。画面がうるさくなったり、まったりしたボケの印象が殺されるだけですから。

色収差

色収差はボケだけではなくて、描写全体に影響があります。簡単に言えばこれは色がにじんでしまう現象で、滲みによって輪郭もボヤっとした感じになる傾向があります。

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離れているとよくわかりません。

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中央付近の蛍光灯のアップ。問題なし。

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画面端部。ごくわずかですが、収差が出ています。蛍光灯の 輪郭が青と赤でボヤっとしています。

色収差も口径食のように絞ることである程度の改善が見込めます。

球面収差(年輪・玉ねぎボケ)

このタイプのボケは非球面レンズを多用すると発生しやすいそうです。原理はよくわかりませんが…どうやら非球面レンズを使用すると球面収差か色収差のどちらかは排除できるのですが、もう片方は排除できないのだとか。レンズ作りの過程で色収差の排除に焦点を置いたら球面収差が出てきやすいってことですかね…?

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ぶっちゃけ年輪ボケ(球面収差)なんて探さないとわからないです…(球面収差は非球面レンズレンズで出やすいそうです。私ほとんど使わないからかな…)

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わかりますでしょうか。白い光源の玉ボケにご注目ください。普通に考えたらボケの中心が一番明るくて外側が暗くなるはずですが、この場合ボケの外側が明るくなっています。これが球面収差。とは言えこれはかなり軽度。色収差も少し出ているような気がします。

この球面収差ってのは、原理的には二重ボケが出てしまうのと同じです。あいにく二重ボケのいい例が手元にないのですが…。

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ボケがうるさいなと思ったらだいたい二重ボケ出てます。髪の毛のあたりのボケが無法地帯です。

球面収差も絞ることである程度の改善が見込めます。ボケの量は多少減るかもしれませんが、ボケがきれいじゃなかったら元も子もありませんからね…。にしてもたくさん光が入るっていうのはいいことばっかりじゃないんですね。

 

雑言:ボケの美しさは評価されるか

ボケが美しいに越したことはありません。やっぱり寄って写真をなめるように見るようになるとボケの美しさっていうのは気になるものです。だからまあ高いレンズってのはボケ方にもこだわっていたりするわけですが…。

実際言ってしまえば、ボケ方までゴリゴリこだわる人は物好きです。私はまあまあ気にするのでまあまあ物好きです。いや普通に物好きだと思いますが。とにかく一般人の感覚からいうと、どのようにボケているかというのはいちばん上に来る問題ではなさそうです。絵でいえば、どの筆使ったかなんて普通の人は気にしませんよね。多分そんな感じ。

ただ「細部までこだわり抜く」という点ではボケにこだわることも悪いとは言えません。やっぱりボケにまでしっかり目が行き届いた作品は構図や光の使い方もきれいだったりしますし。ただボケに気をとられてほかのことに盲目になってしまっては元も子もないのは自明の理。

ここまでキレイなボケ方についての長ったらし文章を書いてきましたが、特に初心者・中級者まではそこまでこだわる必要なんてないのかなって思います。かく言う私も中級程度ですが、ボケ方まで気を使っていると時間もかかるし、急げばそれはそれで構図などの方がおろそかになることもありますし。まずは全体の完成度で完璧に近いところまでもっていってから、ディティールにこだわり始めるべきなのかなと思います。

 

結論。

絞りましょう。特別な理由がない限り。開放で撮るにはデメリットが多すぎます。ボケ方にこだわらないにしろ、開放で撮るよりは少し絞った方が全体の写りもよくなります。2~3段絞るくらいならボケ量はさほど犠牲にせず、ほとんどの光学特性の問題を改善できます。これが当ブログの名前の由来なわけですが、私も普段撮影をするときは2~3段絞って撮ることがほとんど。開放じゃその場ではガチピンに見えてもあとでPCで拡大するとピンボケなんてことがよくあります。絞った時はそんなことはあまりありません。

絞る、ということは、F値を増やす、つまりはボケを抑えるということになりますが、ボケの美しさを求める場合にはボケの多さよりもボケの質に焦点を当てた方が良い結果につながりやすいです。単焦点初心者の人なんかはぼかすのが楽しすぎてほとんどモードをAvにして常に開放で撮ってたりしますが、単焦点の描写力の高さは実は開放ではほとんど発揮できていません。真の力を見せるにはある程度はボケの量を犠牲にする必要もあります。

最初はいろいろなF値で同じ場所から同じ被写体を撮り続けてみるのも面白いでしょう。どこがどうぼけているとか、よ~く見ながら撮影してみましょう。ボケから学ぶことは多いですよ。