こんにちは、壁紙です。
今回はかねてから告知していた中華イヤホンのレビューをしていきます。
さて最初のイヤホンはKZ AS10です。
目次
中華イヤホンとは?
中国のメーカーといえばHuaweiやらLenovoやらXiaomiやら鴻海やらいろいろありますが、中華イヤホンというと大企業のブランドも一応当てはまりはしますが、多くはKZのような中華系中小企業の「不確実さ・不安定さを持ったイヤホン」というニュアンスが強いです。
KZとは?
KZとは中国の深圳(しんせん)に拠点を構える「深圳市原泽电子有限公司」のブランド「Knowledge Zenith」の略です。深圳市うんたらのほうの読み方はわかりません、すみません。最も会社の名前で呼ばれたりとか、Knowledge Zenithとかいう名前では呼ばれず、ほとんどの場所でただ単純にKZと呼ばれることがほとんどです。2019年1月現在ではイヤホンとその周辺機器(ケーブルなど)の販売しかやっていないようなので、KZはオーディオ専門ブランドのようです。
KZとBA
KZは現在中華イヤホンのブランドでも最も成功しているといっても過言ではないくらいの人気と評価を集めています。その魅力はやはり価格の安さにあります。ですがKZは価格の安さで終わらない魅力があります。廉価ながら高音質のイヤホンも多数輩出しており、特に2017年からはBA(バランスドアーマチュア)型のイヤホンの製造を開始しました。これは特筆すべき点で、世界でもBAドライバを製造することができるメーカーはWestoneやKnowles、Sonyを含めた数社程度です。中国メーカーにもBAの製造能力を持つところはあるそうですが、特許技術も多いBAは単価が高いです。しかしそのBAをKZは自社製造をしています。つまりBAなのに安い!というのがKZ。最近のKZは自社製造のBAを生かしたラインナップが中心であり、ZS6やZS10など人気機種が多いハイブリッド型のZSシリーズ、ピュアBAを謳うASシリーズに注目が集まります。
KZ AS10とは?
お待たせしました。ここまでの長いお話はすべてAS10の解説をするためにあります。KZはAS10以前にもZSシリーズやESシリーズ、ZSシリーズでBAドライバの搭載に挑んできました。特に2018年に入ってからリリースされたBA搭載機の評価はそれまでよりも高く、KZにとって2018年はBA元年といってもいいでしょう。そんなBA元年にKZが自身を胸に発表したのがAS10・BA10・AS06。この三機種の共通点はどの機種もBAのみを搭載した点。BAの弱点として低音再生が苦手なのですが、ようやくウーファー用BAの開発に成功したようですね。AS10の位置づけはモニターライクのハイエンドということでAS06とは差別化を図っているようです。
AS10のレビュー
今回AS10はAmazon経由で購入しました。Aliexpressなどで買うと割安な場合が多いですが、今回は価格があまり変わらなかったので早く届く方にしました。
外箱は黒一色のタイプで2018年に入ってからのKZのハイエンドタイプ用の箱です。中はスポンジ状の詰め物になっていて、イヤホンの名前が刻まれたプレートは金属製です、付属品は最低限のものといった感じで、本体、ケーブルとイヤーピースが3サイズ付属します。ケースなどは付属しません。到着時の時点で傷などは見られませんでした。
エージング前レビュー
さてここからが肝心の音質面のレビューになります。再生環境は以下の通りです。
- 再生端末:Walkman A20 + FiiO Q1 Mark II (USB DAC出力)
- 音源:Bohemian Rhapsody / QUEEN ほか
まず聴き始めの感想としては、フラットよりなのかなという印象がありました。KZはドンシャリ系のイヤホンが多いのですが、AS10では低音の過剰な強調はありません。またBA10での不満点であった中音域の遠さが払拭され、ボーカルがかなり聴きやすくなっています。こういった点からもこのイヤホンがBA10とははっきり差別化されていることがわかります。分離感・定位感は非常によく、BA10よりはっきりしていると感じます。この点が良いか悪いかは人によって、または聴くジャンルによって違うと感じますが、ここでは再現性の高さとして評価します。少し残念だなと思った点は高音域のトゲがあることで、BA10にはなかったサ行の刺さりが出ているためにアップテンポの曲は聴き疲れしそうだなという印象はありました。またこの高音の無駄な主張のせいで全体のバランスが取れなくなっています。ただしジャズやクラシックなど静かな音楽では全体のバランスと分離感がよかったために個人的にはエージング後の出音が期待できます。
エージング後レビュー
KZは箱出しの出音が安定しているケースがほとんどなので、エージングしないまま聴き続けることが私はありますが、AS10で聴かない間はエージング音源を使ってエージングをしました。音源はChord & Majorのホームページにあるものです。これを20回程度行いました。
エージング後は割と大きい変化がありました。まず高音の少しトゲは落ち着き、前のようにサ行くらいでぶっ刺さることはありません。ただし、いまだにジャンルによってはハイハットの音で耳が痛くなります。高音はゆがみもあるようで、聞いていて小気味いいものではありません。またあまり予想はしていませんでしたが、低音のボリュームが以前より増しました。KZのイヤホンはエージング後に低音の量感が増える傾向があるのでこれは少し誤算。特にQ1 Mark IIのバスブーストをONにすると見違えるようにドンドンし始めます。低音ドライバの感度がいいのでしょうか?結果として(他のKZイヤホンよりはフラット傾向だが)弱ドンシャリホンというのが私の所感でした。
リケーブルの相性
私は現在BA10やAS10の付属ケーブル(純銅・4芯)の他にリケーブル用のKZのアップグレードケーブル(純銅銀メッキケーブル・8芯)を所有しています。今回の評価では純正とアップグレードケーブルを付け替えて聴くほか、現在メインとして使っているBA10ともリファレンスとしてアップグレードを装着上比較を行いました。
結論としてはかなり迷いましたが、リケーブルの必要は基本的にありません、というのは断言します。まずリケーブルによって得られる一番大きな要素である「情報量の増加」ですが、これによって高音域のトゲはさらに増す傾向があります。また低音の量感も増して全体のバランスが上手く取れなくなってくるのです。ただし先ほども述べたように「静かな音楽」や「ローテンポな音楽」はリケーブルも視野に入るのではないでしょうか。やはり中音の定位感はリケーブルをした方が上がるので、クラシックなどの曲を分析的なリスニングをしたい方はリケーブルをオススメします。
外見・装着感
こういうレビューを見る人は音質面での評価以外にはあまり興味がないと思うので、外見などのレビューは後回しにしました。これが吉と出るか凶と出るか…。
さて外見のレビューですが、まず目を惹くのはネットワーク基板に描かれたKZの文字。ZS10やES4から引き継ぐデザインですが、これかっこいいですね~。クリアパネルは接合部のチープさなどがありますが、まあ値段が値段なので文句は言いません。シェル~ステム部の部分はZS10とは違って不透明な黒い樹脂製です。こちらは安っぽい感じはあまり受けません。ただ印字の部分がすぐ剥げ落ちそうだったりはします。多分すぐ落ちますね。イヤホンの内側上部に小さい穴が開いていますが、これはおそらくダクト穴です。黒いプラスチックを貫通しているようで、中の空気圧を調整する構造のようです。これをふさげば低音がおとなしくなるんでしょうかねぇ。ステムは少し長めにとってあります。長すぎるのもあれですが、少し長い方が耳の奥までしっかり入るのでむしろ装着感はいいと思います。一応返しがついているのですが、非常に小さいかつ三つの突起のみでイヤーピースをひっかけることになりますので、イヤーピースが落ちることは間々あります(私もソニーのトリコン付けたら落ちました)。
装着感は…まあうん。まずシェルが大きいので人によってはすごく邪魔に感じると思います。BA10で大き目シェルには慣れている私も「なんじゃこりゃ!!?」と思わず声を上げてしまうサイズです、AS10は。お世辞にも装着感はいいとは言えませんが、角がない分は痛くなったりとかはありません。異物感がするだけです。そこさえ慣れてしまえばステムはKZにしては細めなので長時間のリスニングも問題ないでしょう。まさかここでBA10意外とシェル小さい疑惑が浮上するとは思ってもみませんでした。
総論
個人的にBA10の音作りが結構好みで、AS10の音にもかなりの期待を寄せていましたが、少しがっかりな結果になりました。まぁ見た目からしてロックなどを聴くタイプには見えないのですが、いつも聴く曲がそういうものだと低い評価にはなってしまいますね…。普段使いをしたかった人間からすると期待を裏切られたような気持ちもします。ただ私自身家でゆっくり音楽を聴くようなシチュエーションではAS10を使いますし、そういう使い方をするのがこの子の正しい使い方と私は確信しています。ただやはり初めてのピュアBAでこのレベルまで仕上げてくるのはさすがKZと称賛を送るに値すると思います。今回の☆×3は、これからのKZに期待しての評価となります。
- 総合評価:★★★☆☆
- 外見:★★★★☆
- 装着感:★★★☆☆
- 音のバランス:★★☆☆☆
- ロック系:★★☆☆☆
- ジャズ・クラシック系:★★★★☆