開放より2段絞ったところ

徒然なるままに…主にカメラの事を書いていくことになるかと。

F値の謎

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こんにちは、壁紙です。

 

皆さん、F値ってご存知ですか?

そう、絞りの開き具合を表すのがF値です。絞りというのは人間やほかの動物でいう瞳孔であす。瞳孔は網膜に届く光の量、絞りはフィルムないし撮像素子に届く光の量を調整しているわけです。

F値が影響を与えるものとしては明度もそうですが、ボケ具合も関係してきます。F値ISO感度、SS(シャッタースピード)と併せて写真作りとは切っても切り離せないものなのです。

 

F値の難しい話。

F値って、私は最初どういうものか皆目見当もつきませんでした。というのも、F値が高くなればなるほど絞りが小さくなる=レンズを通る光の量が少なくなることはわかっていたのですが、具体的にF値がどのように定められていたのかは知りませんでした…。

そのF値の事実を知ったのは最近のことです。ちなみにF値の「F」とはfuckの隠語 focalから来ていて、日本語に無理やり訳すなら焦点比とかそんな感じになるのかな…。このF値とは言ってみれば焦点距離と開口部の直径の比で、式としてあらわすと、

F = \frac{f}{\phi}

F = F値, f = 焦点距離, \phi = 有効口径

 

ああ、難しい。こんな話聞きとうない。

カメラに数学なんてナンセンスだ!なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、その実ほとんど数学でできているのがカメラ…。

まあ、まだ続けますけどね。

 

F値\sqrt{2}倍(だいたい1.4倍)になるごとに光量(面積)は半減します。よく考えてみるとF値って変な数値が多いですよね。それ実は\sqrt{2}の倍数になっているからなんです。この証明をちょっくらしましょうか。

f = 50(mm), \phi_1 = 50(mm)とし、F_1, F_2をそれぞれF値、\phi_2を有効口径、\\S_1, S_2を光が通過する面積とする。\\なおF_2 = \sqrt{2}F_1とする。

 

 F_1 = \frac{f}{\phi_1} \\ ~~~~ = \frac{50}{50} = 1

 F_2 = \sqrt{2}F_1 = \sqrt{2}

 \therefore \sqrt{2} = \frac{f}{\phi_2} \\ ~~~~~~~~ = \frac{50}{\phi_2}

 ~~\phi_2 = \frac{50}{\sqrt{2}} = 25\sqrt{2} ( \approx 35.36)

 

 S_1 = \pi(\frac{\phi_1}{2})^2 \\ ~~~~ = \pi25^2 = 625\pi

 S_2 = \pi(\frac{\phi_2}{2})^2 \\ ~~~~ = \pi\frac{625\times2}{4} = \frac{625}{2}

 \therefore S_2 = \frac{S_1}{2}

...ちょっと難しすぎる???

F値わかりにくい疑惑

わかると「あ~すげえ」ってなるんだけど、まあ普通はならないと思う。覚えといてほしいのは、「F値 \sqrt{2}増えると、光量が半分になる」ということ。増える半分。これが紛らわしい。増えてるのに減ってるって…すごくわかりにくいですよね。

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こういうの反比例なんて言ったりしますが、直観的にはF値も一緒に減っていってくれるとわかりやすいような。もっと厄介なのが自分で露出計算するときで、「え~と、F値 2\sqrt{2}増えたから、光は半分の半分の半分だから \frac{1}{8}で…」なんてこんがらがって頭が爆発しそう。

逆にしません?

そこで私が提案したいのが、「 \frac{1}{F}(エフオーバー)値」です。単純な話、F値の逆数なだけですが…。計算をするときにはこのFオーバー値を二乗すると面積比がすぐに出せるので、光量の増減が丸わかりです。

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というか、そもそも \frac{1}{F^2}で絞りを表示するのもありなんじゃないかななんて思いますけど。実際私が露出を計算するときは一回この \frac{1}{F^2}の形に直していますので、最初からこの表示になっていると非常に楽です…。(実際ISOやSSが半分になれば光量も半分になるのでそこの計算は簡単なのですが、F値だけ\sqrt{2}倍になると光量が半分になるのは本当に紛らわしいです。)

このような直観的に面積比がわかるような表示があってもよさそうですが、残念ながら現時点では「公称F値」というものが台頭しており、ほかの表示方法は普及していません。

そもそも論。

ここまでダルダル数学まで持ち出してきて申し訳ないんですが、正直F値って参考程度にしかならない値なんです。レンズの仕様によっては焦点距離を図る場所が変わってきますし(詳しくは「レトロフォーカス テレフォト」で検索)、レンズが伸びれば伸びるほどフィルム・撮像素子に届く光は少なくなります。なのでF値は写真を撮る上では確実な数字ではなかったりします。

またボケ具合というのも焦点距離やセンサーサイズによって異なりますし、そもそもその焦点距離っていうのも「参考値」くらいだったりするので、F値はほぼあてにならないといっていいでしょう。

この「曖昧なF値」問題を解決するにあたって世の中には「実効F値」や「T値」、「H値」があります。こいつらは光学的要素(レンズの透過率etc.)を考慮しているため、単純に「露出を決める」というプロセスにおいては(公称)F値よりこれらの数値が優位であることには間違いないでしょう。

それでも便利なF値

先ほど実効F値などの光学的要素を含んでいるとお話ししました。つまりF値には光学的要素は一切含まれておらず、単純に「焦点距離÷有効口径」で求められているわけです。

デメリットはやはりレンズの透過率だとか、実際の光量が考えられていない点です。が、メリットもあってまずは計算が非常にシンプルであるのと、絞りの有効口径が直観的にわかるところです。例えば実効F値というのは同じF値でも焦点距離や撮影距離で絞りの有効口径を変化させることで一定の光量を確保できるようにできています。つまり、同じF値でも絞りの開き具合が違うということ。これが実は厄介なところがあって、開放付近では問題になることも少ないでしょうが、絞りを小さくしたときに回折現象の回避光芒の量の調整が困難になることが予想されます。その点同じF値では同じ有効口径が担保されている公称F値はそういったことに関しては長けています。

まとめ

 F値はかなり広く使われている値ですが、その示す値の有効性に関しては疑問が残るものです。しかし現時点でほとんどのカメラ・レンズが公称F値という、[tex:F = \frac{f}{\phi}という式から求められる値を使っていることから、実用性は担保されていますしかなり特殊なケースでもなければ「有効口径∝光量」と考えてよさそうです。

ちなみにニコンだけは実効F値という焦点距離・撮影距離による光量落ちを考慮したF値を採用しています。しかし公称F値も実効F値も一長一短であるため、それぞれの得意不得意をしっかり把握しておく必要があります。