星空とノイズ
こんにちは、壁紙です。
この間、近所の公園で花を撮りがてらあたりももう真っ暗だったので天の川を撮ってみたんですが…
こんな感じです。天の川をしっかり見たのは初めてでした。家の前からは全く見えないのにすぐ近所の公園では肉眼でもはっきり見ることができました。
被写体には満足です。すごくきれいで、川って呼ばれる理由がよくわかります。
ただ全体的にはいまいちなのです。なぜならノイズが目立つから。ざらざらした画面のせいでせっかくの星の煌びやかさが損なわれてしまっているのです。
ということで今回のテーマは星空とノイズと銘打ちまして、星空撮影におけるノイズ軽減のメソッドを考えていきます。
星空は関門
比較明合成をする時とは違って星が動かないようにシャッターを切らなければいけない関係上、ISOが上がりやすくなります。できるだけSSは遅くして感度を低くしようと努めてみましたが、1600くらいが限界でこの写真もISO3200での撮影です。レンズを明るいものにするのもありではありますが、私の手持ちでは18mm(換算28.8mm相当)より広角のレンズがなく、18mmはズームレンズのワイド端なのでF3.5とあまり明るくはないのである程度限界はあります。SSを10秒以上にすると星が動いてしまうので、ISOもつられて上がってしまう形になります。
私としてはとにかく感度は下げたかった…。なぜか。釈迦に説法ですが感度を上げるとノイズが増えてしまうから。
先ほどの写真のズームアップです。編集で軽減をする努力はしましたが、まだ画面の粗さは見ることができます。
ノイズの種類
ひとことにノイズといっても写真に写りこむノイズというのは様々なものがあります。
この写真をオリジナルとして各種ノイズを付けていきます。
1. 輝度ノイズ
これは簡単にいうと「白黒のノイズ」です。実際には名前の通り明るさの違う画素ができてしまうわけです。輝度ノイズが出た写真は基本的に「ざらざら」とした質感になります。一般的な対応策としては周囲のピクセルの色を平均してやるというものになります。
2. 色ノイズ
これは画面に色のついた斑点状のノイズが出るものです。百聞は一見に如かずとも言いますし、さっさと例を載せておきます…。
見た感じではあまり輝度ノイズとの違いはありません。
両者の違いは簡単に言えばカラーのノイズか、モノクロのノイズか、です。
フォトショのノイズを付加する機能でも「モノクロ」という項目があり、モノクロの方は輝度ノイズの呼ばれます。
3. 劣化ノイズ
これは特に画像編集を行った後に起こりやすいノイズです。限界を超えて明度を上げようとすると、データ的に「無理」が生じて、ノイズが発生します。
この画像だと左上などに劣化がはっきりとみられます。
星の写真でもやはり明度やコントラストを無理に上げようとするとノイズが出やすいです。
一般的なノイズ軽減の方法
最近の写真管理ソフトがすげーなとおもうところは、ちょっとした編集もできてしまうことです。さすがに本家本元画像編集ソフトにはかないませんが、露出補正からコントラスト調整、ホワイトバランスまでほぼなんでもできちゃいます。それこそ写真を撮った後に必須となるような微調整なら画像編集ソフトに行く必要すらありません。
そんな中AdobeのLightroomにはノイズ軽減という機能が標準装備になっています。
こちらがホワイトバランス調整に加えてノイズ軽減を最大の設定でやってみたものになります。ノイズはだいぶ軽減されて見るに堪える写真にはなりました。
ただ普通のノイズ軽減では問題があります。
普通のノイズ軽減ではディティールをつぶすことでノイズを目立たなくしています。
ノイズを取りきるのはやはり難しいのですが、変なごまかし方をするせいで寄ってみるといびつな絵になっています。遠巻きで見る分にはあまり目立たないかもしれませんが、やはり解像感は失われる印象があります。
他の方法を考える
普通のノイズ軽減の方法ではノイズが消えるどころか画質の劣化を招きかねないので、ほかの方法を考えてみましょう。
加算平均
これはHDRと似た手法ですが、同じ構図の写真を数枚撮って、ノイズの平均をとることで目立たなくしようというもの。高感度ノイズというのはランダムに出るものなので、平均した画像を取り出すことで一定程度はノイズの軽減が見込めるわけです。またどこかをぼかしたりしてノイズを目立たなくするのではないので、画質の劣化もかなり抑えられることが期待できます。
中央値
これ平均との違いがよくわからなかったのですが、だいたい同じものと考えていいのではないかと思います。ノイズ除去だけではなく、不要物の画面からの除去にも使われるようです。
ダーク減算(ダークフレーム減算)
長時間露光をすると撮像素子っていうのは熱を持ちやすいです。人間が深い考え事をすると頭が熱くなってくるのと同じように機械も何かしらの処理をしているときは少なからず熱を持ちます。カメラでいえば長時間露光は「センサー動きっぱなし」なので熱を持ってしまうわけです。熱を持つと人間なら頭痛になったりしますが、撮像素子は長秒ノイズや輝点というものを出してしまいます。
この輝点というのは暗くても出てしまいます。なぜかといいうと撮像素子由来のものであり、光学的なものではなくて電気的なものだからです。そのためノイズが出るところは一定で、その点ランダムな場所にノイズが出る高感度ノイズなどとは少し性格のノイズとなります。私は今まで出会ったことがありませんがこれが厄介なものだそうで、高感度ノイズなどのように後編集で消すのが難しいらしいとか。唯一このノイズを除去できる有効な手段がダーク減算またはダークフレーム減算といわれるもの。長時間ノイズ・輝点の一定の場所に発生するという特徴を逆手にとって、真っ暗な画像を使ってノイズだけをあぶりだし、その部分だけ引いてしまおう(=減算)というもの。
検証。
後々作業するのは自分ですし、どれくらい効果があるのか自分の目で見てみたいので検証をしてみました。
検証方法
一枚の写真に様々な量のノイズを加えて、それらにノイズ軽減の各手段を適用してみます。
こちらがノイズが乗った状態のオリジナルの画像です。
ブログ掲載上の関係で縮小していますが、ノイズが乗っているのはよくわかるのではないかと思います。この画像を作るのに9枚の異なるノイズ処理をしてあります。この画像に各種編集を加えてノイズ除去をしていきます。
詳細部の確認のため、以上の部分にズームインしてみます。
左上から①、②および③とします。
平均
おお、かなり効果があったみたいです。画面のざらざら感はかなり改善されました。
一応ズームしてみてみましょう。
こちらは①のズーム。全体的にザラつきがなくなり、特に右側の星雲のあたりの解像度がかなり高まっています。通常のノイズ軽減だとありがちな「星が少なくなる」という現象もみられません。
②は画面左下の部分です。こちらでもかなり大きな効果がありました。オリジナルの左下は色ノイズによって黒部分が変な色になっていましたが、平均によってだいぶ改善がなされています。
③は星雲の薄いところです。ノイズによって解像感が大きく左右されそうなパートですが、平均では滑らかさが出ているものの、星雲の繊細さは失われずに保たれています。
平均 - まとめ
思ったよりあっさり結果が出ました。結構いい結果です。元画像にさらにノイズを載せた感じになるので、解像度に限界があるのは承知でしたが、それでも結果はよかったのではないかと思います。
中央値
平均との違いが判らない中央値ですが…とにかく試してみるまではわかりません。
早速ですが、中央値の結果がこちら。
平均値と同様、ノイズはかなり軽減されたようですが…寄ってみましょう。
こちらもやはり平均と同様に解像度を保ったままノイズの軽減に成功しているようです。
②ですが、こちらもいい感じ。若干平均よりも解像感があるような気もしますが…。
色ノイズはだいぶ消すことができました。輝度ノイズはまだ残っていますが、おそらく元画像のノイズが原因かと思います。まあほかの画像でも輝度ノイズは残ったままだったので許容範囲です。
結果の比較
オリジナル、平均と中央値を並べて比較をしてみましょう。
画像が少し小さいですが、ノイズの軽減具合でいうと平均値が、色の保存度でいうと中央値が少し勝っているように思えます。
こちらでも結果は同じような感じ。ノイズの減り具合でいうとやはり平均が優れています。
今回は色ノイズの減り具合に違いが出てきました。中央値を使ったときのほうが色ノイズの減少具合が大きいような気がします。
一方星雲の薄い部分である③では決定的な違いはないように見えます。やはり中央値を使った方が色味がいいような気は心もちします。
結果。
調査の段階であまり大きな違いは見られませんでしたが、実験結果にもあまり大きな
違いは出ませんでした。ただ明確な違いとしてはノイズの減り具合と色の保存度に少しですが、違いが出ました。
今回の実験では同じ写真に異なる方法でノイズを載せたものにノイズ軽減処理をするというものでしたが、これでは正確な結果は出ないと思われます。あくまで今回の結果は参考の範疇に収まるのではないかと思います…。
次回は同じ構図で撮った複数の写真に同様の処理を行って結果を検証してみたいと思います。