開放より2段絞ったところ

徒然なるままに…主にカメラの事を書いていくことになるかと。

【イヤホンレビュー】KZ ZS10

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こんにちは壁紙です。

 

波に乗りに乗り遅れた感はありますが、長らく気になっていたイヤホン・ZS10を入手しましたのでレビューしてみます。

KZの分岐点

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中期KZの代表機種ともいえるZS10

ZS10は2018年春頃にKZが発表したハイブリッドイヤホンです。これまでにもKZは数々のハイブリッドイヤホンを輩出していましたが、ZS10はそれまでの流れとは異なり3WAY 5ドライバーとしたことが特徴。これは高音域中音域低音域5つのドライバーで分担するということで、このようなドライバー構成は俗に多ドラと呼ばれます。こうすることによりDDとBAそれぞれの得意分野を伸ばすことができ、音の分離度が良くなります。サラウンド感を上げるためにドライバーを増やすわけではないため、イヤホンでいう多ドラというのはスピーカーのマルチチャンネルとは少し違うニュアンスです。

5ドライバーを超えるような本格的な多ドラ機はKZにはそれまで存在せず、ZS10以降のイヤホンは5ドライバー、のちに8ドライバーや6ドライバーがリリースされる契機となりました。音の傾向もこの頃を境に2019年現在の「クール系」に確定したことからも、KZの方向性を決定したマイルストーンと呼べそうです。

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この図でいうと見切れていますが2017年のハイブリッド機開発成功に続く流れがZS10です。

 

ZS10の特徴

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実物のZS10。横からBAが確認できます。デッドスペースは結構広いですね

ZS10は先程も述べた通り片側5ドライバー、内訳は1DD+4BAという構成です。ZS10で採用されたBAは最新のイヤホンでも搭載されているものが散見されますが、DDは古いタイプのもので俗に「第2世代」と呼ばれるものです。第1世代との違いは分からないのですが、現在最新とされる第3世代との大きな違いは電子回路です。詳しい話はここでは控えますが(ZS10 Proの記事で詳しく解説しています)、第2世代は第3世代に比べ低音が抑えられています。

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ZS10の内部構造図。ドライバーが多いです。

またZS10リリース時のKZといえば個体差や初期不良が取り沙汰されました。初期ロットのZS10は正規のDDではないものが使われていたとか...?新品市場はほぼ後期ロットといっても過言ではないでしょうが、中古市場にはまだドライバー違いのZS10がごろついているようなのでよく見てから選んだ方が良さそう。気になる人は「ZS10 勾玉 多孔」で検索してみてください...。音質的には初期ロットの方がいいっていうから何がなんやら。ちなみに今回私が入手したものは後期ロットでした。私が購入したZS10は中古でしたし、割と最近購入されたものらしいので不良はありませんでしたが、発売当初は位相が反転していたり音がすぐに出なくなったりなどの問題が多発したようです。私は時期的にZSN以降のユーザーですので詳しいことはあまり分からないのですが…やはりZS10とZSNの間くらいからKZのビルドクオリティというのはググっと高まったように思えます。

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外見的にも、音質的にもKZを大きく飛躍させた立役者・ZSN。現在発売されているKZのイヤホンはおおむねZSNかAS10をベースにしています。

音質レビュー

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DAPiPhone 8 Plus

アンプ:Q1 Mark II

イヤピ:ディープマウント

ケーブル:並のやつ

音源:Apple Music

楽曲:Still Alive/JYP, Target/IZ*ONE, DALLA DALLA/ITZY, JALJAYO GOOD NIGHT/TWICE, FANCY/TWICE, Candy Pop/TWICE, Bohemian Rhapsody

今回は中古で購入したのでエージングはパスして、いきなり音質レビューと行きたいと思います。今回から音質レビューでメカ的・音作り的考察はできるだけ避けてファクトだけ淡々と書いて、後から屁理屈を付け加える方式を試してみます。以前のものと今回のものどちらがいいか、もしよければコメントいただけると助かります。

 

全体的な音傾向はスッキリ、ドンシャリ

 

まず高音域は最も量が多いと感じる音です。音の質としてはドライバが共通なこともあってAS10のそれに近いかもしれません。特徴は量多めかつ刺さり気味で、特に女声ボーカル曲などでは音量を上げすぎると例のBAの音がすぐ歪み始めます。突き抜けが良いのかと思いきや高音側BAの繋ぎがよろしくないのか高い音はいまいちスっと伸びていきません

 

中音域は圧倒的に伸びが足りません。音のつながりというところで問題が多く、スムーズに伸びて欲しい音が打ち止めになりやすいです。また量感は少なくボーカルは引っ込みがちです。ボーカルの質感は十分艶めかしさがある一方、雑味が多く打ち消されてしまう印象です。ポップスとなると低音と高音に押されている感じで物足りないです。やはり高音と同じように天井が近い印象を受けます。

 

低音域は特に残念なポイント。量こそ少ないのですが、質が悪くブーミーで安っぽい感じがあります。控えめに言いましたが、実直に言うとなかなかにクソです

スピード感がある曲では低音が足を引っ張りモコモコした音になりがちです。良くも悪くも2018年までのKZらしい音という感じですね。ここはケーブルやイヤピ選びを慎重に行えば耐えられる範囲です。

 

音場はいまいち広がりません...。響きは大きめなので聴き始めは「お?」っとなるんですが、しばらく聴いていると横方向の広がりが少なく

、クラシックやジャズなど見通しがいい曲だとストレスが溜まります。例えばAS16との比較では、AS16はバイオリンの音がグッと横から入ってくるのですが、ZS10は前から聴こえてきます。真正面とは言わないものの、オーケストラを聴くにはいささか心許ない音場です。

 

解像度は5ドライバーということを考えるとあまり良くないどころか、悪い部類に入ります。高音域の分離度さすが多ドラといった様相ですが、中音域の雑味が解像度の面において悪い方向に寄与しています。ドライバ数が少ないイヤホンと比較してもやはり解像度はよろしくないです。

 

定位感は悪いです。ジャズなんかだとベースとドラムが同じ位置から聞こえてくるような...。混ざるわけではないんですが、やはりクラシックやジャズといった劇場型の音楽を聴くには定位感は足りません。

 

音質と直接関係ない所ではノイズは意外と乗りますね。DDオンリーはS/N比が高いんですが、中音域以高の音域にBAを採用しているせいもあってかノイズは聴こえやすいです。また後述の装着感より外音遮蔽性は良くないです。

 

外装・装着感

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AS10(左)とZS10(右)

さて外回りに関わる方面のレビューです。

 

まず気になるのが筐体のサイズですが、おそらくこれまでにリリースされてきたどのKZのイヤホンよりも大きいです。同じドライバー構成のZS10 PROはかなり小型なのであれと比べると辛辣なんですが、AS16と比べても一回り大きいです。

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(左端から)AS10、ZS10、ZS10 Pro、BA10、ZSN、EM023。

まぁぶっちゃけ装着感に差し支えなければ筐体の大きさなんて実用上ほぼ関係ないんですが、ZS10はステムが短めなので使う人を選びますね。私はZS10のサイズくらいならすっぽり耳に入るんですがやっぱりステムが短いせいでイヤピースはしっかりフィットしません。心配な人はダブルフランジないしトリプルフランジのイヤピースを使って長さを稼ぐのもいいでしょう。ただしこの場合イヤピースにおける快適性は下がります

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ZS10(左)とZSN(右)。ステム自体の長さはさほど相違ありませんが、ステム根元がZSNではスリムに仕上げられているのに対してZS10ではずんぐりとしています


ビルドクオリティはと言いますと、さすが過渡期のKZフォンとだけあって微妙な感じ。フェースに回路をバンッと出してくるデザインは個人的に大好きですが、接合部などをよーくみると粗が出てしまいます。持った感じも大きさの割に重さがないので密度を感じません...。まぁ中華イヤホンはそういう所有欲を満たすためのイヤホンではないですね。諦めましょう。

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このデザインも好みが別れるのかもしれません。

考察

ただAS10レビューでも触れた通りこれも悪い所ばかりではなく、ストリングなどの無機質な音の表現には一役買っています。エレキは歪んでた方が楽しい音になりますからねぇ。ただ「面白い音」は「原音再生」ができることの上に立つものなのでこの点は課題と言えます。

同型番のBAではこのような問題はあまり見られなかったのでDDが原因と考えられますね。ちなみに以前ご紹介した雑過ぎる音響測定でもZS10からZS10 Proにかけてチューニング変更があったことがわかっています。 

 

総論

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界隈で評判が非常にいいZS10ですが、全体的にブラッシュアップが足りていない印象を強く受けます。実際このZS10を踏み台にしてASシリーズや実質的な後継機であるZS10 PROが開発される運びになったのでZS10に完璧さを求めるのはちょっと違う気もしますが...。

評価すべき点としてはKZとしては低域と広域を抑えてあることです。これによりかなり強烈なドンシャリが多いKZファミリーとしては聴き疲れしにくい、ある意味では優しい音になっています。ただしKZの売りは非常に高い解像度と輪郭がはっきりした音作りであるので、こういう音作りは得意ではない印象。Finalなどの「うまい音の丸め方」を聴いてしまうとやはり野暮ったい音だなと感じてしまうのが実情。もろもろの点を考慮した結果、ZS10は買いではないです。

 

今回はかなり厳しめに評価を付けましたが、最新のKZホンと比べてしまうと妥当とさえ思える結果です。

 

  • 総合評価:★★☆☆☆
  • 外見:★★☆☆☆
  • 装着感:★☆☆☆☆
  • 音のバランス:★★★☆☆
  • ロック系:★★☆☆☆
  • ジャズ・クラシック系:★★★☆☆

 

ここから少し感想が入ります。巷の評価も結構二分することが多いZS10ですが、実際に聴いてみると「そんなにすごくもないし、ひどくもない」というのが正直な感想でした。あるレビューでは解像度の高さを、あるレビューでは弱めに抑えられたドンシャリを取り上げていたり…。批判レビューの多くは意外にも装着感や初期不良がらみだったりで音質に関しては特に批判的なものはありませんでした。購入にあたって、いわゆる「有名レビュアー」のレビューを参考に情報収集をしたのですが、正直その手のレビューの八割は「情報」としてあてになりません。特にYoutubeのレビューを徹頭徹尾信じてはダメですよ…。自分で聴いてみて一番感覚が近いなと感じたのは普段なら辛口すぎるだろ…とさえ思ってしまう某辛口レビュワーさんです。私自身Carbo iの音にドハマリしたりとだんだん耳が近くなっているのかもしれませんね笑。